世襲制限


「今日はビールでいくか」
「もちろん『YEBISU』だろ」
「当然」
「残念ながら 冷えたマグがない」
「缶のままでいいでしょ」
「あぁ、たまにはな」



  汗をかいた缶を手で拭ってプルタブを開ける



「ちょっと俺、ご立腹なんだよ」
「なんでさ。痔がひどいのか」
「それもあるけど、『世襲制限』ってバカにしてね」
「そうだな。『世襲だから』投票してるって見てるわけだろ」
「俺たちは政策を考えないバカな愚民ってことか」
選挙制度はあてにならんって言ってるのと同じだな」
「確かに世襲は有利だろうけどさ」
「『三平』の子供の『こぶ平』が面白いとは限らないわな」
「それすら見抜けないバカな愚民ってことかよ」



  誰が言ったか知らないが「夏だ ビールだ」とは名言だ



「でもなにか手を打っとかないとマズイかもよ」
世襲制限しろってことか?」
「国際的にさ。北朝鮮が3代目チラつかせたろ」
「それは関係ないだろ」
「国際世論が『世襲イカン』って言い出したらどうする?」
「ヤバイ、外圧か…。日本は過剰反応しそうだな」
「しかも『一党独裁』で『人権軽視』のセットで来るかもよ」



  冷えたビールが喉を下る
  胃袋まで降りていくビールを感じる



「日本もほぼ一党独裁に近いもんな」
「国内ではそう思ってなくても
 『政権交代のない国』って思われてるかもな」

「前にちょっとしたけど」
「寄せ集めの短命政権に過ぎない。政権交代したとは言い難い」



  アルコール度数が低く飲みやすいが腹に溜まるのが難点か



「でも『人権軽視』はないだろ」
「だけど日本にはまだ女性の総理大臣がいないだろ」
「女性の人権軽視ってことか?」
「言いがかりなら何とでも言えるでしょ」
「でも、アメリカだって女性の大統領はいないじゃねぇか」
「今の大統領は黒人だよ。人権軽視はしてないって言える」
「勝手に差別して、勝手に平等だって言ってるだけじゃねぇか」
「じゃあ、日本で『アイヌ民族』が総理大臣になってるか?」
「今はアイヌの国会議員すらいないな…」



  何本目かのプルタブを起こす
  このプルタブも日本の技術力の集約らしい



「そんな問題は多かれ少なかれどんな国にもあるだろうけど
 外圧で過剰反応するかも知れないのが怖いだろ」

「パニくるな」
「それこそ勝手に大騒ぎでしょ」
「んじゃ、政権交代すりゃいいのか?」
「今のままじゃ政権交代したって世襲だし
 女性総理は生まれそうにないよ」

「どうしようか…」



  考えたらつまみがない
  いいか。気にしないでいこう



「第3勢力を作ればいいんじゃないか」
知名度だけで国会議員の集団か」
「芸能人が一番可能性はあるな」
「あとスポーツ選手」
「女子アナ」
「どうせ政策は関係ないバカな愚民だからな」
「1億3千万、総バカ計画」



  空き缶を見て次の資源回収の日がふと頭をよぎる



「で、総理大臣は誰がやるんだ?」
世襲じゃなくて既存の政党に関係なくて女性って言ったら…」
ガッキーか」



  酔っぱらいの夜は更ける





fin