「戦争と平和」


「おう、また来たぞ」
「今日は何持ってきた?」
「お前の好きな『Wild Turkey』だよ」
「じゃあ、バカラのショットグラスだな」


  棚からバカラのショットグラスを取り出す


「何観てたんだ?」
「DVD、『戦争と平和』だよ」
「ヘップバーンか?好きだね〜」
「まぁね」


  琥珀色の液体がゆっくりと注がれる


「そういやぁオバマさんが『核兵器』なくすって言ってるな」
「あぁ、でも現実的に無理だろ。北がDONしたし」
「でも 出来りゃなくしたいでしょ」
「そりゃそうだ。それが出来たら今度の大統領選挙までに
 アメリカの選挙権取って、オバマに投票するよ」

「ま、頑張ってくれぃ」


  グッと一息に飲んだTurkeyが全身に行き渡る


「大体 一部の国だけが持つからいけないんじゃないのか?」
「持ってない国にしてみればそうだよな」

  
  二杯目が注がれたグラスは部屋の間接照明に照らされ
  複雑に刻まれたカットと琥珀の液体をテーブルに映し出す


「持ってない国のこと考えないと」
「みんなが持てばいいってことか?」
「赤信号もみんなで渡れば怖くないって発想だよ」
「でも使ったら終わりだし
 使っちゃいそうな独裁政権もいっぱいあるだろ」


  手首でグラスを少し回し 再び一気に飲み干す


「だから、それを使わせないように考えよってこと」
「どうすんだよ」
「なんか国際機関が一括で管理すればいいと思わない?」
「今 各国にある核兵器をか?」


  ここまで二人は同じペースでグラスを空けるが
  徐々にペースが変わっていく


「そう。そうすりゃ
 『みんなが持ってて、みんなが持ってない』ことになるだろ」

「よく意味が分からん」
「今ある核兵器をどこかの国が持つんじゃなくて
 みんなで管理しましょうってこと」

「管理してどうするんだ?」
「どっかの国が核の管理に参加してる国に向けて核を使ったら
 その管理してる核を打ち込む」

「参加してない国が使ってもか?」
「容赦なし。でも出来りゃ参加国は多い方がいいかな」


  Turkeyに刻まれた12年の歳月が俺の体を駆けめぐる


「でもまぁ 確かにそれぐらいしなきゃ無くならんかもな」
「核を維持するのだって結構な金かかるだろ」
「今、核を持ってる国は
 その金をみんなに出させるってことだな」

「持ってない国は
 割安で持ってるのと同じことになるだろ」

「悪くない気がするな」
「でさ、毎年いくつかずつ廃棄していくようにすりゃ…」
「何百年後にか無くなるかもな」
「制裁の為にいくつかは必要だけど」


  何杯目かのグラスを空けミネラルウォーターを口にする
  あくまでもミネラルウォーターでは割らない


「現状より無くなりそうな気はするな
 問題は『国連』にそんなもの管理させて大丈夫かってことだな」

「国連なんかに管理させるような危険なマネ出来るかよ」
「じゃ、どこに管理させるんだよ」


  ゆっくりと体を回るTurkeyは
  こいつを二人に見せる力を持つようになっていく


「国連よりも加盟国が多いのって言えば…」
「 FIFAか!」
IOCは信用ならんだろ」
FIFAにもそこまでの信頼はないぞ」
FIFAを母体にするだけで
 そこから別組織を作ればいいんじゃないか」


  もともと怪しい思考回路が更に怪しくなる


「なんて組織だよ」
「そりゃもちろん…」
ガッキーか…」


  酔っぱらいの夜は更ける





fin