地デジ


「おぅ。焼酎持ってきたぞ」
「芋か。相変わらず酒にはうるせぇな」


  相変わらず酒にはこだわる男だ
  一応バカラを出すか


「まぁな。アレ!?テレビ買い換えたんか?地デジ対応か」
「らしいな。貰いモンだからよく分からん」
「あ、こっちにも年代モンがあるな。明らかにブラウン管の」
「俺が観るのはブラウン管。そっちは子供達が観てる」
「こっちのも早く買い換えないと観られなくなるぞ」
「らしいな。ったく、余計なことしてくれるよ」


  氷を入れながら応える
  確かにうまい酒を持ってきやがる


「何だ?余計な事って?」
「地デジだよ。まだブラウン管で充分観れる」
「バカ。あれはテレビだけの話じゃないんだよ」
「っていうと?」
「電波を効率よく使おうって話なんだよ」
「意味が分からん」
「詳しい話は俺も分からんけど 電波を効率よく使うことによって
 他の電波も使えるようになるんだとさ」

「警察無線とかか?」


  蒸し暑い夜だからか 喉を通る酒が心地好い


「さあな。詳しい話は知らんよ
 そんな事は自分でネット使って調べろよ」

「めんどくさい」
「映像だけじゃなくて色んな情報も地デジで見られるだろ」
「そうなの?」
「リモコンに赤とか青とかのボタンないか?」
「あるよ」
「それでニュースとか天気予報とかやってるよ」
「あ、ホントだ。ゲームとかに使うボタンだと思ってた」
「もったいないなぁ。お前には確かに地デジはいらね〜な」


  うなずきながらキツイ酒をチビリ…


「でも、何でそんな大事なこと ちゃんと宣伝しないんだ?」
「酔っぱらっちゃったからだろ」
「いや、その前からしてないだろ」
「そういえばそうだな」
あなたのテレビは見れなくなりますっ!ってだけじゃん」
「宣伝してたんじゃないのか」
「もっと広く知れ渡るように努力しないと」
「どうやって?」
「昔の「Nシステム」みたいにさ」


  最近 歳のせいか酔いが回るのが早い気がする


「Nシステムってあの車のナンバー読み取るやつか?」
「そう。あれだって最初は
 プライバシーの侵害とかって大騒ぎだったじゃん」

「今じゃ誰もそんなこと言わんな。なんかあったのか?」
「Nシステムが犯罪捜査にこんなに役に立ちますって
 一大キャンペーンやったからだよ」

「どんな宣伝?」
「実際の事件でこんなにNシステムが活躍してます
 って報道させたじゃん」

「あぁ、あったな そんな事件」
「あれをまたやりゃいいんだよ」


  俺のペースも相当なモンだと思うが
  コイツには到底かなわない


「でもそんな都合のいい事件なんかそうそうないだろ」
「あるじゃん、新型インフルエンザ」が」
メキブーじゃないのか?」
「あ、俺のブログ読んでんだ」
「一応な」


  そろそろ2本目の用意をしないと


「あれで「最新の情報は地デジのこのボタンでお届けします」
 って言えばいいんじゃない」

「それじゃ地デジ持ってない人は困るだろ」
「実際入手出来る情報なんて問題ないよ
 「地デジ持ってる方がより多くの情報を持てる」
 って思わせりゃいいだけ」

「そりゃ詐欺だよ」
「情報操作なんてそんなモンだろ」


  いつもそうだが
  また今日も氷が足りなくなってストレートになるんだろうな


「まあな」
「もし地デジ化が不況のせいで遅れたら経済的に大変だろ」
「確かにテレビ局も地デジとアナログと
 両方の番組作らなきゃならんからな」

「じゃあテレビ局は真っ先に協力するでしょ」


  2本目の口を開ける


「ところで今回のブログの落ちはどうすんだ?」
「なんだかなぁ」って阿藤快のブログ貼りたいんだけど…」
「ダメなんか?」
「よろしくないみたい」
「ダメだこりゃ」は?」
「お亡くなりでしょ」
「だっちゅ〜の」は?」
「誰も知らね〜よ」
「じゃあアレ貼っとけよ。得意のやつ」


ガッキーか」




  酔っぱらいの夜は更ける






fin