あのニュースを振り返る



天皇陛下が中国の要人にお会いになったニュースがあった。


 何から何までツッコミどころ満載の話題のはずだが、どうも既に過去の事のようだ。過ぎたことであっても、俺なりに話を整理しながらこのニュースは一体何だったのか考えてみた。大部分が憶測だけれど、読みたい人だけどうぞ。



まず、話の流れを整理すると…


・中国の副主席が天皇陛下に謁見したいと言ってきた
宮内庁はこれを「1ヶ月ルール」を盾に拒否
・内閣のゴリ押しで宮内庁が折れ、会見が決定
宮内庁長官が記者会見で政治利用の懸念を訴える
民主党小沢幹事長の記者会見「辞表出して言え」
宮内庁長官「辞めない」
・滞りなく天皇陛下は中国副主席との会見をする


 全ては宮内庁長官の記者会見から問題は起こったようだけど、確かにその記者会見がなかったら正直「1ヶ月ルール」なんて知らなかった。そういった意味ではこの記者会見は非常に重要だ。内閣官房長官の要請でそのルールをねじ曲げたようだけど、どうして内閣はそこまでしたのか?また「1ヶ月ルール」を当然知っているはずの中国は、何故、無理矢理に天皇陛下に謁見したがったのだろうか?宮内庁としても「1ヶ月ルール」を知ってる相手に断るのは簡単だっただろう。現に1度は断っているようなのだから。どうして宮内庁はこの要請を受けたのか?
 中国の思惑は置いておいて、日本の現内閣はどんな意味があってルールをねじ曲げたのか?これはどう見ても小沢幹事長の意向に沿ってると思われる。そうなると中国に対して先日の訪中の「お礼」の意味合いがありそうだけど、それだけとは到底思えない。他の意味が必ずある。
 この宮内庁への「ゴリ押し」、小沢幹事長サイドからだけでは無かったようで、「元首相」からの圧力もあったそうだ。たくさんいる「元首相」の中でも宮内庁のルールを変えられそうな人なんてそうそういない。この元首相はどうも中曽根康弘氏のようなのだが、だとすると、中国は「お願い」を最低2人にしていたことになる。天皇陛下との謁見を是が非でも成功させる為には「念のために…」、って意味ではないだろう。日本における「今現在の真の実力者はどっちか?」を調べる為じゃないだろうか?天皇陛下を動かせるのは誰か?どっちか?「1ヶ月ルール」を知った上で無理を承知で試したのでは?
 元首相の要請は宮内庁が断っているので、内閣、民主党小沢幹事長としては実力を中国に見せつける為になんとしてでも天皇陛下を引っ張り出したいところだ。これは中国だけじゃなく諸外国にも「No.1は小沢」と知らしめることになる。
 そしてそれは成功し、中国は誰がトップかを確認できた。天皇陛下を動かせるほどの実力者なら今後はここを通せばなにかと「ゴリ押し」が出来ることが分かった。この小沢幹事長は並の政治家ならとっくに消えているほどの、いくつものスキャンダルを乗り越えて今の力を得ているので、これからも失脚する可能性は比較的低い。彼をサポートし、そのルートを維持、強化するのは得策だろう。
 小沢幹事長としても内外にその実力をアピール出来た訳だ。その上、今回貸しを与えたのは将来有望な「副」主席なのだから、このルートの寿命は長いと思われる。しかし、これからこのルートを通ってやってくるものは無理難題である可能性が高いのは気がかりだけれども。


 だけど、どうして小沢幹事長はそこまでのゴリ押しが出来たのか?


 まず、どうして宮内庁はこんなゴリ押しを通したのか?まさか憲法に則(のっと)ってなんてバカな事は言えないだろう。今回の会見を断っても憲法上全く問題ない事なのは誰よりも知ってるはずだ。「天皇陛下をお守りする」気もサラサラないように見える。守ってるのは自分自身、「保身」に他ならない。
 本当に「天皇陛下をお守りする」気があったなら、会見が決定する前に記者会見をするはずだろう。全部事が決まってからの記者会見にどんな意味があるというのか?この記者会見は「ゴリ押し」があったことの報告をしたとしか考えられない。では何故その報告が必要なのか?もしかしたら「約束を忘れるな」と言う事じゃないだろうか?無理なお願いを聞いた見返りがあったのではないか?一体どんな?


 「宮内庁事業仕分けの対象にならない」


 それくらいのことはあったのではないだろうか?元々宮内庁の予算なんて微々たるものだし仕分けの対象になっていたかも疑わしいが、それを明確に約束したんじゃないか?そこで「政治利用」があったという記者会見をしておけば、約束が反故になったときに世論を「あの時の仕返しをされている」と煽ることが出来る。自分は天皇陛下を守りたかったけれど、力が及ばなかった、更に予算も削られた、となればさすがに世論も黙っていないだろう。
 結局、自分の「居場所」を確保したいだけのパフォーマンスじゃないのか?予算の確保だけではなく、「天下り先の斡旋」があったとしても不思議ではない。元々この宮内庁長官は生え抜きではないし、宮内庁にそんなに天下り先があるとも思えない。喉から手が出るほど欲しいものだろう。当然だが、この「予算」「天下り」は他の省庁にも使える手ということになる。もしその手を小沢幹事長が使っているとすれば、民主党の支持率を支えている「事業仕分け」は各省庁に対するただのハッタリ、脅しだったのかも知れない。考えてみれば民主党の支持団体に関連性がありそうなところには追求がハッキリと甘かった。
 もし宮内庁が本気で天皇陛下を守るならば副主席との会見を阻止したはずだし、記者会見でぶちまけるなんて愚行はできないだろう。それは天皇陛下が現内閣に利用された、天皇陛下は現内閣の「言いなり」と言っていることになるのだから。「皇室を守る」ことが仕事のはずの宮内庁がそんなことをしたということは、それ相応の見返りがあったと考えてもおかしくはない。


 そもそも「天皇陛下の政治利用」なんてあやふやな行為の線引きはどこでするのか?極論を言ったら何をやっても政治行為になるのは目に見えてるのだから、結局「政治利用」の名目で「皇室を縛ること」をしたいだけじゃないのか?もう簡単に内閣が天皇陛下を好きに出来なくなったようだが、「宮内庁長官、良くやった」などの声に乗って、宮内庁天皇陛下を好きに出来る免罪符を手に入れる事になってしまったのではないか?今後の内閣は宮内庁が「よし」とすれば天皇陛下を自由に使えることになってしまう、と考えてしまうのは心配のし過ぎだろうか?そしてそのことによって「見返り」を貰うことになるとすれば「切れる」長官ではある。



 よく考えるとこの宮内庁長官の記者会見のタイミングもなんか変な気がする。ちゃんと小沢幹事長が反論できる時間を残している。天皇陛下が中国の副主席と会見するの前の「ココしかない」ってタイミングになってる。しかも週末でニュース番組が少ない時の記者会見。たまたまとしては出来すぎてる。
 内閣側も内閣側で、連立を組んでる社民党が黙ってる。民主党の支持団体のはずの日教組も黙ってる。その上、右翼団体も左翼団体も黙ってる。騒ぎが大きくならない一番いいタイミングで事が運ばれている感じが否めない。


 計算ずくか?出来レースか?


 反論の記者会見を開いた小沢幹事長の主張も全く論理性を欠いていて、憲法を持ち出したもののそれは憲法解釈以前の主張で、とても内閣のゴリ押しを正当化出来るものではなかった。宮内庁長官に「辞表を出してから言え」との恫喝とも取れるコメントだけが印象に残る記者会見だった。
 それに対して宮内庁長官も「辞めない」のコメントを発表しただけで憲法論議には持ち込まなかった。無茶苦茶な主張をそのまま受け入れた形になっている。
 つまり「無茶苦茶な主張も通る」前例を作ったのでは無いだろうか?無茶苦茶な要請でも現内閣、それをコントロールしている小沢幹事長には逆らえない図式を作りたかったのではないか?それがきちんと各省庁に行き渡るようにしたかったのではないか?騒ぎが大きくならないタイミングで粛々と行われたとは考えられないだろうか?
 法律でも条令でもない、ただの「慣例」にしか過ぎないルールを壊しただけだろうが、おそらくどこの省庁にもこういったものは存在すると思われる。仮に法律だったとしても「改正」出来る権限は政治家側にあるので、今回は名刺代わりといったところではないのか。




 この騒動で中国は日本の実力者は小沢幹事長であると確認した。将来にわたってこの「小沢ルート」を使えるように更に強力にすることだろう。小沢幹事長民主党での地位を維持する限り国内の政治的権力を掌握することになった。もちろん中国からのサポートを受けられる。宮内庁はアメ玉と引き替えにその片棒を担ぐ…。関連した全員が得をする見事としか言いようのない「ニュース」だった。ただし天皇陛下を除いてだが…。
 問題はアメリカの出方だけれども、アメリカがこの内閣を裏工作によって潰そうとすると、それは中国との対決を意味することとなる。そんな危ない橋をアメリカは渡るだろうか?その上現政権は良いことか悪いことかスキャンダルにすごぶる強い。自民党政権だったならば既に2〜3人首相が替わっていてもおかしくないスキャンダルがわんさかあるのに全く動じていない。多少アメリカがちょっかいを出してもこの支持率はそれなりに維持出来るような気がする。


 来年の参議院選挙を乗り越えれば、最近の総理大臣が全員避けてきた問題も解決できるかもしれない。圧倒的な支持のあった小泉首相でも為し得なかったこと、


 「8月15日に公人としての靖国神社参拝」。


 その時誰が首相になっているかは分からないけれども、支持率が落ちかけていた場合もこれで挽回出来る可能性はある。少なくとも中国は絶対に文句を言わないはずだ。



2009.12.23